面白かった文庫本

2008年2月 8日 (金)

気分を紛らわす・第2弾

 1月の入院中に読んだ面白かった本を列挙しようと思ったのですが、お薦め本が多く、短い感想文を書くのにも途中でとても疲れてしまいました。

そこで、今回はいくつかに分けて紹介しようと思います。

○風野真知雄 著  《 耳袋シリーズ 》 ★★★★

    

  ・第1巻 「耳袋秘帖 赤鬼奉行根岸肥前」 

  ・第2巻 「耳袋秘帖 八丁堀同心殺人事件」

  ・第3巻 「耳袋秘帖 浅草妖刀殺人事件」 

  ・第4巻 「耳袋秘帖 深川芸者殺人事件」

  ・第5巻 「耳袋秘帖 谷中黒猫殺人事件」 

  ・第6巻 「耳袋秘帖 両国大相撲殺人事件」

 江戸の時代に遠山の金さんよりも先に刺青を体に彫った奉行がいた。その人の名は、赤鬼奉行根岸肥前守鎮衛(ねぎしひぜんのかみやすもり)。

 この人は、実在の人物で「耳袋」という著書が本当にあります。

 (平凡社 世界大百科事典より)

 近世後期の随筆。根岸鎮衛(やすもり)(1737‐1815)

 自序は「耳嚢」と記す。10巻。

 各巻100話で,したがって全巻1000話。街談巷説奇聞の類を集めたもの。

 1782年(天明2)ころから書き始め,はじめは3巻で完了していたが間を置い

3巻ずつ書きつぎ,9巻でいったん擱筆したが,さらに1巻を死の前年1814年

(文化11)に完成。

 著者は幕臣で,佐渡奉行,勘定奉行を経て1798年(寛政10)より町奉行をつと

め,名奉行として知られた。

 

 さて、こちらの「耳袋秘帖」の方は、本家本元の「耳袋」の話を随所にちりばめて書かれたもので、“極秘版”として著者、風野真知雄は話をすすめていきます。

 どこかとぼけた小柄な根岸は、62歳で南町奉行に就任する。

 そんな彼には、無頼の徒として過ごしていた若いころ、「若気のいたり」から、左の腕から肩にかけて彫った「大耳の赤鬼の顔」の刺青がある。

 世間からは、実際の耳が大きいことと、また、交友の広さと無頼の時代に培った友達や巷の知識の多さから、「大耳の根岸」とあだ名され、その地獄耳をフルに活用して難事件、怪事件を次々と解決していく。

 もちろん、民のことを第一に考え情けある裁きをする人情奉行なのですが、反面、闇の世界には「赤鬼」として恐れられ、容赦ない決断を下します。

 あっ、そうそう、テレビの遠山の金さんのように背中の刺青を見せて「この桜吹雪に覚えはねえけえ」(←うろ覚えです。間違っていたらすみません)なんていうお裁きはありません。根岸奉行は、肩口の刺青をめったやたらと人には見せないのですから。

 奉行のじきじきの手先として使われている坂巻弥三郎と栗田次郎左衛門が魅力的です。

 はじめは、お互い反発しあっていた彼らが回を追うごとにどのような変化を見せていくかもとても楽しみです。

 

 シリーズものには、読み進むうちに肩入れする登場人物ができ、恋心とはいかないまでも、彼、彼女らの活躍を手に汗握る思いで頭の中に描いていくのがわたしの常なのですが、今回もやはりそういう人物が生まれました。

 池波正太郎の「鬼平犯科帳」を読んでいたときも密偵の伊三次が大好きでした。でも彼は何巻目だったかは忘れてしまいましたが、途中で死んでしまいます。とても悲しくて残念で、どうして死なせてしまったのだろうとしばらく作者を恨んだものですが・・・・・・。

 シリーズものを読むときは、それだけが心配です。

     ★★★★

| | コメント (2)

2008年1月 5日 (土)

紛らわす

 入院中、体調が悪いと読書などとてもできないのですが、少しの痛みや吐き気なら本を読むことで紛らわすことができます。というよりも、何かで気持ちを紛らわせていなければ、とてもその症状を克服できなくなるのです。

そんなときに読んだ本(★3個以上)を列挙してみます。

○ 『しゃばけ』『ぬしさまへ』『ねこのばば』『おまけのこ』 畠中恵 著 ★★★★

   

 最近テレビドラマになっているので、ご存知の方は多いとは思うのですが、体の弱い若旦那と妖したちが事件を解決していくお話です。何も考えず、単純に楽しめます。

○ 『白夜行』 東野圭吾 著 ★★★★★

     

 こちらもテレビドラマになっていたのですね。どこまでがドラマになっていたのか、私は見たことがないのでわかりませんが、読み進むうち、主人公「雪穂と亮司」は、テレビで演じていた俳優さんとは明らかに違うイメージで膨らんでいっていました。読み終えて、人の本性は善であるという「性善説」を疑ってしまう思いを抱いてしまいました。

○『大聖堂 上・中・下』 ケン・フォレット 著 ★★★★★

    

 大聖堂を立てようとする人々のそれぞれのエゴや欲、また権力争いなどの絡まった波乱万丈のストーリーです。1冊1冊がずいぶん分厚く、文字も小さいのですが、登場人物がそれぞれ個性的で、飽きることがありません。壮大なドラマです。

○『海の史劇』 吉村明 著 ★★★★

    

 日露戦争時のロシアと日本をそれぞれ対比させて扱った記録文学。日本海軍よりはるかに上の戦闘能力を持つといわれていたバルチック艦隊は、なぜ敗れたのか? 戦勝国日本が、なぜ不利な講和条約を締結したのか。その歴史の真実が書かれています。日本海海戦の場面にはぐっとひきつけられます。

○『いのちの授業』 神奈川新聞報道部 ★★★

    

 がんと戦った神奈川県茅ヶ崎市の浜之郷小学校の大瀬校長の記録。ーー重いです。

○『落日燃ゆ』 城山三郎 著 ★★★

 東京裁判で文官としてただ一人A級戦犯となり、絞首刑を宣告された広田弘毅の生涯を描いています。読み始めはやや退屈でした。最後は歯がゆいです。重いです。

○『評決のとき 上・下』 ジョン・グリシャム 著 ★★★★★

 10歳の黒人少女をレイプして遺棄した白人青年2人を射殺した父親は、はたして無罪になるのか? 資金不足や嫌がらせや脅迫の続く中、白人弁護士ジェイクは、最後まで彼の弁護を続けることができるのか。人種差別の残るアメリカ南部での町を舞台としたサスペンス。黒人と白人とのその当時の量刑の違い、そして、今現代との量刑の違いに驚きますが、ページをめくるのももどかしいくらい、先を読みたい衝動に駆られます。

○『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス 著 ★★★★

    

 主人公の日記形式で物語りは展開していくのですが、この文章の書き方には、やや抵抗を感じました。もっとストレートに書いて欲しかった。ただ、知的障害のあるチャーリーが手術によって知識をどんどん吸収していくくだりは、拍手喝采だったのだが、吸収していけばいくほど鼻持ちならない人間になっていく。本人にはそのつもりはなくとも周りの人間が変わってしまう。その人々に対する彼の苦悩。最後は涙でした。

○『被爆海域 上・下』 トム・クランシー 著 ★★★

 トム・クランシーらしからぬ内容。題材はとても面白いと思ったのですが、やっつけ仕事的で、掘り下げ方に不満を感じた作品でした。

 以上、入院中に読んだ本の感想を簡単に書いてみました。

 また、7日から入院します。

   

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月22日 (日)

文庫 『覇者』(上下)

    『覇者』(上下)・信濃戦雲録第2部  井沢元彦・著

 『野望』(上下)の続編。

 山本勘助の討ち死に後、武田家には新しい軍師が育っていた。春日源五郎、改め、高坂弾正忠正信。最強軍団となった武田は信玄の野望を果たすべく、天下取りへの道を進んでいく。しかし、その武田の行く手を阻もうとするものが着々と力をつけていた。

騎馬を主軸とする武田と、鉄砲を主軸としようとする織田。

武田は金山を財力とし、地元の農民を駆り出し兵士とするが、一方、織田は、経済を発展させ、それを一手に握ることにより財を成し、農家の次男三男を雇い入れ、専従の兵とする。その違いは先で大きな意味を持つようになる。

『覇者』では、武田と織田を並列させ、物語は進んでいく。

山本勘助亡きこの巻きで、源五郎が勘助に重なるのがとても嬉しい。

「両の目でものを見よ」「戦いは5分の勝ちをもってよしとする」という勘助の教えをもって武田を守っていこうとする。

また、『野望』で武田への憎悪のみで生きてきた望月誠之助も武田を倒すべく成長した姿で登場する。

相変わらず、テンポがよく、ぐいぐいと引き込まれていく。

当然、★★★★★ お薦め本です。

----------------------------------

余談ですが、最近の文庫本、この『覇者』も『野望』もそうですが、文字が随分と大きくなりました。老眼のしっかり入っている家族には大変好評です。その分、厚みは増しますが。

この本の前に読んだ『御三家の犬たち』 南原幹雄(著)は、文字、小さかったです。

それでいてしっかり厚みもありましたから、今の文字の大きさに改訂されたらきっと上下2巻に分かれてしまうことでしょう。

そうそう、この本もなかなか面白かったです。尾張、水戸、紀伊の御三家による将軍の椅子を巡る駆け引きとその犬たち(忍びの者たち)の暗躍に引き込まれます。

ただ、話を盛り上げておいて、ポーンと違う場面に飛んでしまうのが、たびたびあるのには閉口しましたが。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月19日 (月)

文庫 『悲しみの歌』

『悲しみの歌』  遠藤周作著

 戦争末期、九州の大学付属病院で起こった米兵捕虜の生体解剖事件を題材に書かれた『海と毒薬』の続編。

 戦争から30年後。事件関係者だった医師の勝呂、ヒッピーとも思われるガストン、胃がん末期の老人、正義を盾に勝呂を批判する若い新聞記者、大学教授父娘、ぐうたらでどうしようもない二人の大学生などが、時にすれ違い、交わりながら、新宿を舞台として登場する。

 その中でも戦犯としての過去を持つ勝呂がやはり一番心を占める。

 この世の中で最も残酷な場面に立ち会ったばかりに、戦争という異常な世界ではあったが、無邪気な米兵の信頼を裏切ったことへの憤りや、やりきれなさがずっと彼のその後の人生にもついて回る。

 彼は、追いつめられて泣きながらやってくる女たちのために堕胎に罪を感じながらも優しさから手を貸してしまう。そうした女たちの生活を救うための行動は、反対に生まれてくる命を殺すことになるというのに。

 その苦悩が、勝呂に

「善意や親切や思いやりは時には罪悪を作ることさえある」

と言わしめ、

「憐憫は彼の肩に重い荷をいつも負わせ」ることになる。

人の命を救うために選んだ職業であったはずなのに、運命は彼を逆へ逆へと押し流す。

 何かに追いたてられるように一気に読みすすんでいった。

 重い。

 勝呂を理解してくれているガストンの存在だけが救いだ。

 

 ★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月29日 (月)

文庫『野望』(上・下)

  『野望』 (上・下) 信濃戦雲録第一部  井沢元彦著

山本勘助と武田晴信(のちの信玄)の物語。

隻眼で異相の男、勘助は、軍師としての自分を国主となったばかりの晴信に売り込む。

天下取りの計略を聞かされ、「いかに知識があろうとも知恵なくば意味を成さず」とつねづね思っていた晴信は、その知恵を勘助に認め、晴信と勘助の天下獲りの章が始まる。

面白い! グイグイと引き込まれてしまう。

井沢元彦の「猿丸幻視行』も面白かったが、この作品は、それ以上だと思う。

「片目では世の中は見えぬ。両の目で見なくては」 と、勘助は若い春日源五郎や晴信に度々告げる。つまり味方ばかりでなく敵の視点からも物を見よということである。これは、現代にも通じることだと思う。一方的な見方ではなく、他方からも見よという。

天下統一という共通の野望を掲げ、一国一国と平定していくたびにふたりの間には、固い信頼と絆が生まれていく。歴史物であるから行き着く先はわかっているのだが、駆け引きが面白い。

北条や村上義清との駆け引き、そして己の私利私欲のためではなく大義のためにのみ動く長尾景虎(のちの上杉謙信)との駆け引き・・・

引きつけて止まない本である。

一読をお薦めします。

  ★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月19日 (火)

文庫 『深川澪通り木戸番小屋』

    『深川澪通り木戸番小屋』  北原亜以子 著

しばらく、翻訳ものばかり読んでいたので時代物を読みたくなり、手に取ってみた。

人情ものはやはり良い。疲れたときは、こういった話が本当に心地よい。

------------------------

木戸番小屋夫婦を軸とした短編、8編。

己の存在証明であった火消しという仕事を失った勝次、花火にのめりこんだばかりに勘当された清太郎、「お金持ちになったおちかちゃんが、植木職人の銀次さんと一緒になるのは健気で、貧乏人のわたしが三枡屋の若旦那と一緒になるのは図々しいんですか」と泣くおていなど、思い通りにならない壁にぶつかりながら、なんとか活路を見出そうとする市井の人々を描いている。

傷つき、切ない思いをした主人公たちが、木戸番の笑兵衛、お捨夫婦に見守られながら、曲がりなりにもそれぞれの生き方を見つけ、収まっていく様子がとてもいい。

★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月 7日 (木)

文庫『真相』

     『真相』  横山秀夫 著

息子を殺害した犯人が捕まった。彼は、思いもしなかった息子の姿を警察に告げる。真実はどこにあるのか。村長選に出馬した男のどうしても当選しなければいけない理由。合宿中に溺死した友人は、事故だったのか、自殺だったのか?

事件後の真相を巡る短編集。

横山秀夫の『半落ち』もそうだが、内容的には、やはり重い。

主人公たちのこれからのことを考えるとやりきれなさが残ります。

けれども読み出したら止められない。

真相は、誰でも知りたいですから。

★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月30日 (木)

文庫『ビタミンF』

      『ビタミンF』   重松清 著

短編7編。

家族の危機に直面したとき、父親は…。

正しい答えなど誰も知らない。

誰も彼もが家庭を作り、子育てをするのは初めての経験である。

危機に直面したとき、それが正しい判断であったのか、誰もわからないし、その判断に揺るぎない自信などどこにもない。

けれど、家庭を崩壊させるわけにはいかない。

お父さんの物語である。

ほっと一息つけます。

この作者の短編集『日曜日の夕刊』も読んでみたくなりました。

一読をお薦めします。

 ★★★★★

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月28日 (火)

文庫『ゴールデン・フリース』

 ゴールデン・フリース  ロバート・J・ソウヤー 著

  

47光年離れた惑星を目指す宇宙船〈アルゴ〉で女性科学者が死んでしまう。

 アルゴのコンピューター“イアソン”は、自殺だというが・・・。 

なぜ、彼女は死ななければならなかったのか。

はたして、宇宙船は、無事、目的地に到着するのだろうか?

*

人口知能を持った“イアソン”自身が語り、ストーリーは展開していく。

SFミステリー。

コンピューターなのに非常に人間っぽいところがいい。

心の傷ついた相手にどういう風に声をかけるかと悩んでみたり、人間の言葉に傷つけられたり、悪知恵(?)をはたらかせてみたり、と、非常に魅力的である。

最後の1ページまでぐいぐいと引っ張ってくれる。

お薦め本である。

★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月 6日 (月)

文庫『屍鬼・(1~5)』

         屍鬼(1~5)  小野不由美 著

3人の死体が発見されたのを皮切りに村人が次々と倒れていく。何かの伝染病か? 原因のわからないまま事態は急速に進んでいく。

これまた、一気に読んでしまいました。

でも、登場人物の室井の書いている小説の描写、作中作。これがテーマになっているというのはわかるのですが、ちょっとしつこい気がしました。

登場人物は多いです。最初のうちは何度もページを行ったり来たり。

鬼にも視点を置いているので、あまり怖さは感じません、というより、最後のあたりになると、哀れに思う気持ちもわいてきます。

 この作品は、スティーブン・キングの『呪われた町』を下地として書かれているそうなので、そちらの方とも読み比べてみたいと思いました。

★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)