創作短編・つむじ風・1

2013年12月 1日 (日)

つむじ風・1

 試みに写真と創作駄文を合わせてみました。

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    つむじ風・1

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 「又、あなたの携帯代、こんなに請求がきてるじゃない。いったい誰とこんなに話してるの」
 「友達よ。学校の友達」
 「友達って、学校で充分話しはできてるでしょ」
 「だって、学校でできない話がいろいろあるんだもん」
 「もう、毎月こんなに電話代がくるようだったら、お小遣いから払ってもらうからね」
 「わかりましたぁ。以後気をつけま~す」
 「じゃ、私、お風呂行ってくるね」
 娘は、お風呂にも携帯電話を持っていく。流石に浴室までは、持って入らないのだが、脱衣所に置いている。すぐ、連絡をつけなくてはならないような緊急の電話やメールが入ってくるわけではないだろうに。かといって、時々、テーブルの上に無造作にいつまでも置いていたりする様子をみると、親に携帯の中身を見られてはいけないからという理由でもなさそうだ。
 娘の友達は、家に遊びにくる子か、娘が話してくれる名前だけの友達しか知らない。
 私も携帯電話を使うので携帯の使い方は知っている。彼女の携帯の中身を知ろうと思えば簡単に覗き見ることはできる。けれど、いくら親だからと言ってそこまではできない。娘宛ての私信を黙って開封して読んでしまうのと同じ感覚だから。
 私が高校生だった頃、電話は一家に一台しかなかった。だから、親は、電話を子供たちに取り次ぐことによって、彼らの友人関係を知り、筒抜けの話し振りにより彼らの動向をある程度把握することができた。親にとっては好都合なことであったけれど、子供にとっては、少々窮屈なことではあった。
 もし、あの頃、携帯電話というものがあったら…、


 私が、高校を卒業して数日たったころのことである。
 結婚が決まった従姉妹と伯母が久しぶりに遊びに来ていた。
 そんな時、玄関に置いていた黒電話が鳴った。
 いつもなら母がそそくさと出て行って受話器を取るのだが、その日は従姉妹たちとの応対に忙しく、私が受話器を取った。
 「はい、笹岡です」
 「あの・・・三上といいますが、郁子さん、お願いします」
 それは、高校の同じクラスの男の子からだった。
 「あ、わたし」
 「あっ…、今、笹岡の家の近くの公衆から電話してるんだけど、出てこられない?」
 「……」
 「イクコ、誰からなの?」
 「友達」
 「長電話しないでよ」
 「うん」

 高校の卒業式が終わったあとのことだった。
 下級生の女の子が、3人、三上祐介を囲っていた。
 学生服のボタンをもらいに来ていたのだろう。話しかけているのはもっぱら、ストレートの髪を肩まで伸ばした色白の眼の大きな可愛い子だった。付き添いの子が二人付いてきてはいたけれど、彼女たちは完全に蚊帳の外にいた。
 あんなにまで積極的になれるんだ、そう思いながら私は、その様子を横目に数人の友人とワイワイと卒業写真を撮っていた。
 「郁子、ちゃんとこっち向いて」
 「そうだ、郁子。学生服借りてきて、ツーショット写真撮ろう」
 なんのことはない。男女交際には縁のない友人たちが、さも男の子と付き合っていたかのような偽写真を作るため私を利用しようとしているのである。いつものことだから慣れっこだったけれど。
 その当時、私は、女子にしては背が高く、髪をショートカットにしていた。友人に言わせると、ちょっと見、細身の可愛い男の子のようであったらしい。
 私のうちでは、母が子供たちの髪を切っていた。
 美容院で自分の髪がカットされる様子を鏡越しに覚えてきてその腕をふるうのだが、これまで美容師になる勉強などこれっぽっちもしたこのない母なので、その仕上がりは悲惨なものであった。
 切っていくうちに、右が短くなり、それを揃えようと左を切れば、今度は左が短くなりと、悪戦苦闘を毎回続けてきた。それが、いつからか、はさみと剃刀を使う技法を覚えてきて、剃刀カットに活路を見出すようになった。
 剃刀を使うとなれば、当然、髪型は後ろを切り揃えるだけのおかっぱ頭ではない。ショートの段カットになる。おまけに私は、ひどい癖毛である。ピンピンと跳ねる髪に手を焼いた母は、私のカットに剃刀を大胆にそしてこれでもかというくらい存分に使った。その結果、私の頭は、まるで男の子のような髪形になった。
 当時、高校では男子の長髪を許していたので、どうにかすると、私は彼らよりも短い髪の長さになることもあった。

 友人が、女の子に取り巻かれている三上祐介から学生服を取り上げに行った。
 修学旅行の記念撮影のときにも、文化祭のときにも、私の着る学生服はいつも三上佑介のものだった。なぜなら一番最初にこの企画、私に学生服を着せることを提案したのが、三上だったからである。

                                                つづく

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