童話

『まんなか山まんなか池郵便局』

2016年2月15日 (月)

童話・「まんなか山まんなか池郵便局」・5・最終話

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 次の日、カエルさんは、元気に配達に出かけて行きました。

 けれども、カタツムリさんは、郵便局でお留守番をしています。

 郵便を配達する時には、はり切ってピンと嬉しそうに伸びていた二つの目は、今は、ヒョコンと下にたれ、机の前に座ってぼんやり外を眺めています。

  山ミミズの局長さんは、また新しいポストを作るため、トンネル堀のお仕事に取りかかっています。

 局長さんは、穴を掘りながらカタツムリさんのことを考えていました。

   今回の事件でわかったのですが、カタツムリさんは、雨の日も風の日も休まず郵便配達のお仕事を続けていました。

 雨が降ってきた時には、カバンごと郵便物を自分の殻の中にしまっていましたから、どんな大雨が降ろうともお手紙が濡れることはありませんでした。

 ですから局長さんは、こんなふうにお手紙を大切に扱ってくれるカタツムリさんは、郵便局にとってかけがえのない郵便配達員さんだと思いました。

   次の日もその次の日も局長さんは、カタツムリさんのお仕事をどうしようかと考えていました。

 そしてついに素敵なことを思いつきました。

   カタツムリさんには、ずっとずっと先のお知らせのお手紙を配ってもらうことにするのです。

 たとえば、一ヶ月先の「お誕生日おめでとう」や二ヶ月先の「結婚記念日嬉しいな」なんていうお手紙や、「赤ちゃんが生まれました」なんていうお手紙です。

   局長さんは、まんなか池郵便局特製カタツムリさん切手を作りました。

 そして、急がないお手紙にはこのカタツムリさん切手を張ってもらうことにしました。

   それからというもの、山のみんなは、ちょこんと横っちょ向きに帽子をかぶったカタツムリさんの姿を見つけると、とても嬉しい幸せな気持ちになりました。

   なぜなら、カタツムリさんの配達しているお手紙は、みんな嬉しい楽しいお手紙ばかりだったからです。

         

                                       おわり 

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 昨日は春一番が吹いたのに、今日は、一転、冬の寒さに逆戻りです。
 やっと、地面から顔をのぞかせた植物たちも震え上がっていることでしょう。
 もうしばらくの辛抱ですね。(*^-^)

 

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2016年1月13日 (水)

童話・「まんなか山まんなか池郵便局」・4

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 カタツムリさんが帰って来なくなって何日もたちました。

カエルさん一人で忙しくお手紙を配達しています。

そんなある日のことです。

郵便局にこんなお手紙がとどきました。

 「まんなか池郵便局 局長殿

お手紙の配達が、あんまり遅すぎます。せっかくパーティーに招待されたのに、お手紙が届いたのは、パーティーが終わって何日もたっていました。配達が遅れるのは困ります。 シャクトリ虫より」

こんな「困ります」のお手紙が、その後も二通も三通も届きました。それはみんな、カタツムリさんが、配達に持っていったお手紙の宛先の住人からでした。

それからまた数日たったある日のことです。

「ただいまもどりました」

元気な声が聞こえました。

山ミミズの局長さんは、メガネが半分ずりおちたまま、ポカンと口をあけています。

局長さんの奥さんは、ヒエッと言ってよろけています。

カエルの配達員さんは、思わず高く飛び上がり、机の上にのっかっていました。

そうです。

ふうふう言いながら、カタツムリさんが郵便局に帰ってきたのでした。

カタツムリさんは、遊んでいたのでは、ありませんでした。

お手紙の配達がいやになったのでもありませんでした。

カタツムリさんは、郵便配達のお仕事を一生懸命していたのでした。

ただ、それがとっても時間がかかっただけでした。


            つづく

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 今朝は、今冬一番の冷え込みになりました。

いち面に霜が降りて田畑は真っ白です。

ようやく冬らしくなってきました、とニュースでは言っていますが、暖かい冬でもいいんですけどね。

でも、スキー場の人は困るでしょう。お店の人も冬物が売れないので困るでしょう。

今日は、白菜を作っている人が、これで白菜が甘くなると喜んでいました。

そうなんですね。白菜って、寒くなると甘く美味しくなるんですね。(*^▽^*)

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2015年12月18日 (金)

童話・「まんなか山まんなか池郵便局」・3

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 次の日、カタツムリさんは、とても早く郵便局にやってきました。郵便局はまだ開いていません。

 お日様がモミの木の三番目の枝まで昇ってきたとき、郵便局が開きました。

 山ミミズの局長さんは、お日様が2番目の枝まで昇ったときに穴の中から顔を出していました。そして、もうひとりの郵便配達員のカエルさんは、たった今、やってきたところでした。

 「カエルさん、新しい郵便配達員さんを紹介します。カタツムリさんです。仲良くお仕事をしてくださいね」

 「さあ、では、みなさん、今日も一日元気でお仕事をしましょう」

 カエルさんは、いつもの通り黒い帽子をちょっと横向きにかぶって、黒いカバンを斜めにさげて外へ飛び出していきました。

 カタツムリさんは、鏡の前で黒い郵便配達員さんの帽子をかぶろうとしているのですが、どうもうまくいきません。飛び出た目の上にのせると前が見えなくなってしまいますし、目が見えるようにかぶろうとすると帽子はすとんと落ちてしまいます。

 それを見ていた局長さんの奥さんが、帽子のてっぺんに穴を開けてくれました。

 その穴から飛び出た二つの目を出しました。

 これで前が見えます。

 カタツムリさんは、カエルさんのように黒いカバンを斜めにさげて、帽子をちょっとばかり横向きにかぶり、いそいそと、でも慎重に出かけていきました。

 お昼過ぎに、カエルさんは配達を終えて郵便局に帰ってきました。

 けれども、カタツムリさんは、夕方になっても帰ってきません。

 夜になっても帰ってきません。

 山ミミズの局長さんは、もしかすると郵便局に帰ってくるのを忘れて、おうちに帰ってしまったのではないだろうかと、カタツムリさんのおうちをのぞいてみましたが、カタツムリさんの姿はどこにも見あたりません。

 次の日もその次の日もカタツムリさんは、帰ってきませんでした。

 ――カタツムリ君は、この仕事が嫌になったのだろうか。どこかほかのところに引っ越してしまったのかなあ。

 山ミミズの局長さんは、又、配達員さん募集の張り紙をしなければならないだろうかと考えました。

                               つづく

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2015年12月 4日 (金)

童話・「まんなか山まんなか池郵便局」・2

お待たせしました。
 童話・「まんなか山まんなか池郵便局」のつづき、第2話です。

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カタツムリさんは、郵便配達員さんにとてもなりたかったものですから「泳げます」とうそを言ってしまおうかと思いました。

「はい、ぼくは……」

山ミミズの局長さんのまん丸メガネの中のやさしそうな目が、じっと、カタツムリさんの答えを待っています。

「ぼくは……泳げません」

張り切ってピンと伸びていたカタツムリさんの二つの目が、しょんぼりとたれ下がりました。

そのとき、局長さんのお鼻の下に生えている短いひげが、ヒクヒクと動きだしました。

「カタツムリ君、嬉しいです。君は、合格です」

局長さんが、ニコニコ笑って言いました。

「明日から君は、『まんなか山まんなか池郵便局』の郵便配達員さんです。おめでとう」

山ミミズの局長さんが、大きな声でそう言って握手を求めてきました。
 カタツムリさんは、何が何だか訳がわかりません。
 飛び出た目が、喜んでいる局長さんを見つめてパチクリ、パチクリ何度もまたたいています。

実は、局長さんは、泳げない配達員さんが欲しかったのでした。

カエルさんは、お得意のジャンプ力を使ってとても早くお手紙を配ります。
 でも、水たまりを見つけると、ときどき、本当にときどきなのですが、配達の途中なのも忘れて、お手紙を持ったまま水の中にザブンと飛び込み、気持ちよく泳いでしまうのでした。
 そのため、そんな日に配達されたお手紙は、びしょ濡れのままだったり、乾いていても、ぶよぶよになってしまっていました。
 そうなれば、お手紙に何が書いてあるのか、読むのにとても苦労をします。
 するとそんなお手紙を受け取った山の住人から「困ります」のお手紙が郵便局に届くのでした。

ですから、局長さんは、カタツムリさんの試験の時に泳ぐのが好きかどうかを聞いたのです。
 これでカタツムリさんの配る郵便物については、びしょぬれで「困ります」のお手紙が届くことはありません。

       つづく

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2015年11月27日 (金)

童話・「まんなか山まんなか池郵便局」・1

以前、作ったお話を手直しして掲載したいと思います。

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 お日様がニコニコ顔を出し、きらきらと輝く朝露が一粒ぽろんと落ちた葉っぱのその裏で、いっぴきのカタツムリさんが目をさましました。

「ふああ~、よく眠った」

「おや、お日様。ごきげんよう。おはようございます」

 カタツムリさんは大きなあくびをひとつしながら、お空に向かって思い切り背伸びをしました。

 ここは、三つ並んだお山のまん中にある、まんなか山の、その又まん中にある、まんなか池のほとり。
 カタツムリさんのおうちは、その池のそばに一本だけ立っている大きなモミの木のそばにはえている草むらの中にありました。

 きょうのまんなか池は、いつもと変わらず静かで、木々やお空にぽっかりと浮かんでいる白い雲を鏡のように映しています。

 気持ち良さそうに辺りをぐるっと見渡していたカタツムリさんは、モミの木の根元にある郵便局の扉に見慣れない張り紙があるのに気がつきました。
 この郵便局は、山のみんなから、『まんなか山まんなか池郵便局』と呼ばれています。

 いったい何が書いてあるのだろう。
 カタツムリさんがいそいそと出かけてみると、そこには

「郵便配達員さん、求む! まじめなあなたを待っています」

という文字が書かれていました。
 その張り紙を読んだ途端、カタツムリさんは、ワクワクしてきました。

 この郵便局には、郵便配達員さんがひとりいました。
 カエルさんでした。
 カエルさんは、黒い帽子をちょっと斜めにかぶり、ツヤツヤ光る黒いカバンを肩から斜めに提げて、さっそうとお手紙の配達に出かけていきます。
 カタツムリさんは、いつもそれをかっこいいなとながめていました。
 そして、いつか、自分もカエルさんのような郵便配達員さんになりたいなと思っていました。
 ですから、あの張り紙を見つけた途端、カタツムリさんの心はウキウキ、ドキドキしたのです。

 カタツムリさんは、朝ご飯を急いで食べて、郵便局にやってきました。

「おはようございます」

 ちょうど局長さんの山ミミズさんが床の穴から顔をぬっと出したところでした。
 何だか、顔が少し汚れています。
 それもそのはずです。
 『まんなか山まんなか池郵便局』の局長さんのお仕事は、山のあちこちに郵便局につながる穴を掘り、その上に郵便ポストを置いていくことでしたから。
 ポストにお手紙を入れると 局長さんが掘った穴の中にポトンと落ちます。それをポストの真下に住んでいる山ミミズさんのたくさんの子供たちがこの郵便局へ持ってきて、それを郵便配達員さんが配ってまわるのでした。
 とても便利なものですから、いろいろなところからポストを作ってくださいとお願いがあります。だから、今朝も、その新しいポスト用の穴を一つ作ってきたところでした。

「ハイ、おはようございます。何かご用でしょうか?」

「張り紙を見てきました。ぼく、郵便配達員さんになりたいのですが…」

「おお、そうですか。嬉しいですね」

「では、早速ですが、試験を受けていただきますよ。それに合格しないと郵便配達員さんにはなれません」

 カタツムリさんは、試験があるなんて思ってもいませんでしたから、ドキドキしてきました。

「では、始めます」

「第一問。カタツムリ君、君はまじめですか?」

 カタツムリさんは、緊張して「はい」と答えました。

「よろしい」

「第二問。カタツムリ君、君はどんなつまらないお仕事でも一所懸命できますか?」

 カタツムリさんは少し考えて「はい」と答えました。

「うん、なかなかよろしい」

「では、最後の問題です。第三問、これがとても大切なのです」

 山ミミズの局長さんは、コホンと一つセキをしました。

「カタツムリ君、君は泳ぐことが好きですか」

 カタツムリさんは、悲しくなってしまいました。
 なぜならカタツムリさんは泳ぐことができなかったからです。

 

          つづく

 

 


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 ありがとうございます。
 孫のための眠る前のお話として作ったものです。皆様に読んでいただければ幸いです。

 

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